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月別アーカイブ: 2025年11月

第22回造船配管雑学講座

皆さんこんにちは!


有限会社古庄工業、更新担当の中西です。

 

 

さて今回は

~技術革新と人の継承~

 

 

 

造船業界は今、大きな転換期を迎えている。人手不足、デジタル化、環境対応――そのすべてが、造船配管の現場にも影響を与えている。

DX(デジタル変革)による効率化

近年、多くの造船所でBIM・3D CAD・レーザースキャナを用いた配管設計が進んでいる。これにより、干渉チェックやルート最適化を事前に行い、現場での修正作業を大幅に減らせるようになった。

さらに、加工工場ではNC制御による自動切断・曲げ・開先加工が普及しており、精度の安定化と省力化が進んでいる。AIによる溶接条件最適化、ロボット溶接ラインも一部で実用化されている。

環境対応と新エネルギー船

国際海事機関(IMO)の環境規制強化により、LNG燃料船、メタノール燃料船、水素・アンモニア燃料船といった新エネルギー対応船が次々と建造されている。

これらの燃料は、従来の重油に比べて温度・圧力条件が異なり、配管材質や接合方法も専用のものが必要である。ステンレス・インコネル・アルミブロンズなどの高耐食合金が主流となり、配管工の技術要求も高度化している。

技能継承と人材育成

造船配管は、高度な現場判断力が求められる職種である。しかし、若手の入職者は年々減少しており、技能継承が大きな課題となっている。

各造船所では、熟練工の技術をデジタル記録化する取り組みや、VRを活用した溶接教育などが進められている。教育用モデルを通じて「実際の感覚」を再現し、若手が短期間で技能を習得できる環境が整いつつある。

人と技術がつくる未来

どれほど技術が進んでも、最終的に船を仕上げるのは人の手である。パイプの一本一本を正確に通す判断力、機器との取り合いを見極める感覚、それはデータでは置き換えられない職人の経験である。

造船配管の未来は、熟練工とテクノロジーが手を取り合う“共存の時代”だ。デジタルが効率を支え、人が最終品質を守る。その協働こそが、次の造船を動かしていく原動力となる。


まとめ
造船配管工事は、海の上で生きる巨大なシステムを支える精密産業である。一本のパイプの中には、技術・経験・誇りが詰まっている。
それは「見えないところにこそ真価が宿る」世界。

造船配管の職人たちは、今日も限られた空間の中で、船の未来を形にしている。

 

 

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第21回造船配管雑学講座

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さて今回は

~命を守る~

 

 

造船配管の現場は、重量物・高所・溶接火花・圧力試験など、多くのリスクを伴う。だからこそ、安全管理は「技術」と同じくらい重要である。

高所・狭所作業の危険性

配管工は、狭い機関室の天井裏や、高さ10mを超えるデッキ上でも作業を行う。足場が不安定な場所や、溶接時に火花が飛び散る環境下では、常に墜落や火災の危険がある。

作業前にはKY(危険予知)ミーティングを実施し、チーム全員で危険箇所を共有する。安全帯(フルハーネス)・防炎服・保護具の着用は必須であり、溶接中のガス爆発を防ぐための換気管理も欠かせない。

火気・ガス管理

造船所では、燃料タンクや閉鎖区画が多く存在するため、火気使用には厳しい制限がある。溶接やガス切断を行う際は、事前に「火気使用許可証」を発行し、周囲に可燃物がないかを確認する。

また、ガスボンベの転倒防止・圧力調整・逆火防止弁の設置など、設備安全も徹底される。これらの管理が一つでも甘いと、重大災害につながる恐れがある。

品質管理と検査体制

造船配管の品質管理では、施工記録と検査記録が重要となる。
耐圧試験・気密試験・漏洩検査・溶接記録・材料証明など、すべてのデータを船級協会が確認し、承認を得て初めて船として完成する。

特に国際船級(NK、DNV、LR、ABSなど)では、安全基準が非常に厳格で、少しでも基準を満たさない箇所は修正対象となる。これらの検査をクリアするためには、現場の職人と検査員の連携が欠かせない。

チームワークと安全文化

造船配管の現場では、熟練者が若手に「危険の読み方」を教える文化が根づいている。単なる手順の暗記ではなく、危険を“感じ取る力”を育てることで、安全意識が定着していく。

現場での安全は、一人ひとりの判断力の積み重ねによって守られている。

 

 

 

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第20回造船配管雑学講座

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さて今回は

~精度と技術~

 

 

造船配管の現場は、まさに「精度との戦い」である。数百メートルに及ぶ配管が複雑に絡み合う船内で、誤差を最小限に抑える技術こそが職人の力量を示す。

図面と現場のギャップ

造船では、設計図面(P&ID、アイソメ図)をもとに作業を行うが、実際の現場では他工種との干渉やブロック溶接による寸法変形などが生じる。そのため、図面通りに配管を加工しても現場では“合わない”ことがある。

経験豊富な職人は、こうした誤差を現場で読み取り、切断位置やフランジ角度を微調整して対応する。この「現場調整力」が造船配管工の真骨頂である。

溶接技術と検査

造船配管における溶接は、手溶接(アーク溶接、TIG溶接)、自動溶接、半自動溶接など多岐にわたる。特に高圧ラインや燃料配管では、溶け込みの深さや均一性が厳しく管理される。

完成後には非破壊検査(X線検査、超音波探傷試験)が行われ、内部に気孔や割れがないかを確認する。わずかな欠陥も許されず、品質基準を満たさなければ再溶接となる。

溶接技術者は、国家資格(JIS Z 3801)や船級協会の認定を受けて作業する。熟練者になるには、数年に及ぶ現場経験と技術訓練が必要である。

組立・配管ルートの最適化

船内の配管ルートは、限られた空間を最大限に活かすために立体的に組まれている。上下左右、さらには斜め方向に配管を通すことも多く、取り付け順序を間違えると他の配管と干渉してしまう。

そのため、配管班は施工順序を入念に計画し、先行・後行の工程を調整しながら作業を進める。特に主機室・ボイラー室・冷却水ラインでは、複数の班が同時に作業するため、高度な連携が求められる。

計測技術の進化

近年では、3Dスキャニングやレーザー測定が導入され、現場の寸法取りがデジタル化されている。これにより、手測りでは難しかった複雑な空間の採寸が正確に行えるようになり、加工誤差の削減につながっている。

造船配管の現場は、熟練の技術と最新のデジタルが融合する“精密工学の世界”である。

 

 

 

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第19回造船配管雑学講座

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さて今回は

~“血管づくり”~

 

造船配管工事とは、船舶の内部に張り巡らされた膨大な配管を設計・製作・取り付ける仕事である。船は単なる鋼鉄の塊ではなく、無数のパイプによって生命を保っている。燃料、冷却水、潤滑油、海水、空気、消火水、バラスト水、生活用水など、あらゆる流体がこれらの配管を通って流れる。言い換えれば、船舶の配管とは“血管”であり、そこに生命線が通っているのだ。

造船業における配管工事は、溶接・曲げ加工・据付・試験といった複数の工程から成り立つ。新造船では数千本にも及ぶ配管が施工され、1本でも誤りがあれば船の運航に支障をきたす。つまり、造船配管工事は「正確さ」と「耐久性」が絶対条件の職域である。

配管システムの分類

船舶にはおおまかに次のような配管系統が存在する。

  • 主機系統配管:主機関(エンジン)を冷却し、潤滑油や燃料を供給する。

  • 補機系統配管:発電機やポンプ、空気圧縮機などの補助機器を支える。

  • 居住系統配管:乗組員の生活用水、排水、空調、衛生設備などを担う。

  • 安全系統配管:消火装置、スプリンクラー、バラスト、非常排水など、緊急時に機能する。

それぞれの系統は、圧力・温度・材質・口径が異なり、設計段階から専門知識が求められる。

材料と加工技術

造船で使われる配管材は、炭素鋼、ステンレス鋼、銅合金、アルミニウム合金などが中心である。使用箇所によって耐腐食性や強度が異なるため、材質選定は慎重に行われる。

配管の加工では、パイプベンダーによる曲げ加工、端部の面取り、溶接前の開先加工、フランジ取り付けなどの精密作業が求められる。一本のパイプを曲げる角度が数度違うだけで、全体のラインが狂うこともある。

据付と艤装工程

造船では、船体ブロックごとに分けて配管を取り付ける「ブロック工法」が一般的である。配管班は、設計図に基づき、限られた空間にパイプを立体的に配置していく。機関室のような狭い場所では、既設の機器やケーブルとの干渉を避けながら、ミリ単位で配管を通す必要がある。

完成後は耐圧試験・漏洩試験を実施し、気密性を確認する。水圧試験では数十気圧の圧力をかけ、漏れがないかを厳重に検査する。

造船配管工の誇り

造船配管は、完成後にはほとんど見えない部分に隠れてしまう。しかし、そこに通る流体こそが船の命を動かしている。造船配管工は、見えないところで“海を支える仕事”をしているのである。

 

 

 

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