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月別アーカイブ: 2025年6月

第10回造船配管雑学講座

皆さんこんにちは!


有限会社古庄工業、更新担当の中西です。

 

 

造船配管施工の鉄則──“動く構造物”に命を吹き込む現場の掟


今回は、造船配管工事の現場で長年受け継がれてきた「鉄則」について、経験と技術をもとに詳しく解説します。


◆ 鉄則①:図面は“絶対”、でも“現場で完成する”

 

設計図はあっても、船の現場は想像以上に複雑です。

  • 現場の溶接隙間、構造物のわずかな歪み、他配管との干渉

  • 作業姿勢の確保が難しい狭所や曲面、傾斜構造

したがって施工者には、図面を読みつつ、現場で微調整する判断力が求められます。


◆ 鉄則②:すべては“勾配”と“流速”が決める

 

特に排水・冷却水・オイル戻りラインでは、勾配・配管径・流速設計が命。

  • 勾配は基本1/100〜1/50(用途による)

  • 流速が遅すぎると滞留、速すぎると摩耗・騒音・振動の原因に

  • 垂直配管ではエア抜きバルブや水溜まり防止設計が重要

“配管は重力と流体の物理”で動くことを常に意識して施工する必要があります。


◆ 鉄則③:溶接・フランジ接続は“3拍子揃って合格”

 

配管の命は、何よりも接合部の確実性

  • 強度(機械的に壊れない)

  • 密閉性(漏れない)

  • 耐環境性(腐食・熱・圧力に強い)

 

そのためには、

  • 溶接ビードの均一化とノンダメージ(スパッタ・酸化防止)

  • フランジ接続時のガスケット材選定・締付トルクの適正化

  • 磁粉探傷・浸透探傷・X線検査などの**非破壊検査(NDT)**も欠かせません


◆ 鉄則④:マーキング・色分けは“未来への伝言”

 

造船配管には、以下のような配管識別規格があります。

  • 緑=淡水、青=海水、赤=消火、黄=燃料、白=空気など

  • 向き・流体・系統名をラベルやペンキで記載(JIS Z9104 など)

これにより、修理・整備・点検時の安全性と効率が大幅に向上します。

“誰が見ても、わかる設計と施工”がプロの鉄則です。


◆ 鉄則⑤:配管は“振動と腐食”との闘い

 

船は揺れ、振動し、湿気にさらされます。
だからこそ、以下の対策が必須です。

  • 防振支持金具の設置(ゴムブッシュ・Uボルト+スプリング)

  • 電気防食(亜鉛サクの設置)による腐食防止

  • ドレン弁の設置による水抜き・残留液の排出

いくら設計が良くても、「振動→ゆるみ→漏れ→事故」の流れは防がねばなりません。


◆ まとめ:見えない部分こそ、正確・丁寧に

 

造船配管は、完成後に“見えなくなる場所”ばかり。
だからこそ、施工時の1ミリの妥協が、10年後のトラブルになるのです。

  • 設計どおりであること

  • 現場ごとの対応力を持つこと

  • 見えない部分にもプロの矜持を込めること

それが、**船を動かすための“静かな技術者たちの鉄則”**です。

 

次回もお楽しみに!

 

 

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第9回造船配管雑学講座

皆さんこんにちは!


有限会社古庄工業、更新担当の中西です。

 

 

 

造船配管の歴史──巨大な船の中に張り巡らされた“命の管”の進化


今回は、造船業界の中でも縁の下の力持ちである「造船配管工事の歴史」に注目し、その誕生から進化、そして現代に至るまでの流れをたどっていきます。


◆ 船に配管?と思われがちですが…

 

造船配管とは、船舶内で使用されるすべての配管システムの設計・製作・施工を担う仕事です。
飲料水、燃料、冷却水、排水、空調、消火システム、排煙、油圧系統、蒸気ライン――
つまり、配管なくして船は動かないどころか、1メートルも航行できないのです。


◆ 明治期:日本の近代造船とともに始まった配管工

 

日本における本格的な造船配管の歴史は、明治時代後半〜大正時代初期、洋式艦船の国産化とともに始まりました。

  • 船内にボイラーを搭載し、蒸気配管で動力を伝える時代

  • 鉄製の手曲げパイプ、リベット式接合が主流

  • 当時はまだ「専門職」として分化されておらず、船大工や鍛冶職人が兼任する形でした


◆ 戦後〜高度経済成長期:専門工種としての確立

 

1950年代〜70年代、日本は世界の造船大国へと躍進。
この時期、造船配管は明確に「専門職」として独立し、技能体系が整備されていきました。

  • 油送・燃料供給ラインの複雑化により、多種多様な配管系統の登場

  • 銅管や鋼管に加え、ステンレスや高張力鋼配管も導入

  • サブマリン(潜水艦)や大型タンカーなど、高圧・高温・耐震配管が求められるように

この時代に造船配管は「単なる水の通り道」から「システム構成の核」へと進化を遂げます。


◆ CADと3D設計の登場による転機(1980〜90年代)

 

それまで手書き図面+現場の勘に頼っていた設計が、
コンピューターによる**配管3Dモデル化(CAD/CAM)**によって一変します。

  • 配管の干渉チェック・空間干渉の事前検出が可能に

  • プレファブ(事前工場製作)による現場溶接数の削減と施工効率化

  • より正確な材料拾い出しとコスト削減

造船配管は、より複雑で精密なものへと進化し、同時に設計と製作の分業体制も進んでいきました。


◆ 現代の造船配管の特徴

 

  • 高圧配管と低圧配管の完全分離

  • 油・水・空気・蒸気の用途ごとの色分け・ラベル管理の徹底

  • 溶接からフレア・フランジ・ねじ式・圧着式など接合工法の多様化

  • 耐火・耐震・防爆・防蝕など特殊環境対応素材の選定

そして、溶接技術者・配管加工技術者の技能資格保有が、今や業界標準となっています。


◆ まとめ:配管は、船の“血管”であり、“神経”でもある

 

推進、操舵、冷却、消火、生活――
船のあらゆる機能は、配管という見えないネットワークで支えられています。

歴史と共に進化してきたこの分野は、これからも技術革新の最前線で「命を運ぶ配管」を担い続けることでしょう。

 

 

次回もお楽しみに!

 

 

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