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日別アーカイブ: 2025年6月19日

第9回造船配管雑学講座

皆さんこんにちは!


有限会社古庄工業、更新担当の中西です。

 

 

 

造船配管の歴史──巨大な船の中に張り巡らされた“命の管”の進化


今回は、造船業界の中でも縁の下の力持ちである「造船配管工事の歴史」に注目し、その誕生から進化、そして現代に至るまでの流れをたどっていきます。


◆ 船に配管?と思われがちですが…

 

造船配管とは、船舶内で使用されるすべての配管システムの設計・製作・施工を担う仕事です。
飲料水、燃料、冷却水、排水、空調、消火システム、排煙、油圧系統、蒸気ライン――
つまり、配管なくして船は動かないどころか、1メートルも航行できないのです。


◆ 明治期:日本の近代造船とともに始まった配管工

 

日本における本格的な造船配管の歴史は、明治時代後半〜大正時代初期、洋式艦船の国産化とともに始まりました。

  • 船内にボイラーを搭載し、蒸気配管で動力を伝える時代

  • 鉄製の手曲げパイプ、リベット式接合が主流

  • 当時はまだ「専門職」として分化されておらず、船大工や鍛冶職人が兼任する形でした


◆ 戦後〜高度経済成長期:専門工種としての確立

 

1950年代〜70年代、日本は世界の造船大国へと躍進。
この時期、造船配管は明確に「専門職」として独立し、技能体系が整備されていきました。

  • 油送・燃料供給ラインの複雑化により、多種多様な配管系統の登場

  • 銅管や鋼管に加え、ステンレスや高張力鋼配管も導入

  • サブマリン(潜水艦)や大型タンカーなど、高圧・高温・耐震配管が求められるように

この時代に造船配管は「単なる水の通り道」から「システム構成の核」へと進化を遂げます。


◆ CADと3D設計の登場による転機(1980〜90年代)

 

それまで手書き図面+現場の勘に頼っていた設計が、
コンピューターによる**配管3Dモデル化(CAD/CAM)**によって一変します。

  • 配管の干渉チェック・空間干渉の事前検出が可能に

  • プレファブ(事前工場製作)による現場溶接数の削減と施工効率化

  • より正確な材料拾い出しとコスト削減

造船配管は、より複雑で精密なものへと進化し、同時に設計と製作の分業体制も進んでいきました。


◆ 現代の造船配管の特徴

 

  • 高圧配管と低圧配管の完全分離

  • 油・水・空気・蒸気の用途ごとの色分け・ラベル管理の徹底

  • 溶接からフレア・フランジ・ねじ式・圧着式など接合工法の多様化

  • 耐火・耐震・防爆・防蝕など特殊環境対応素材の選定

そして、溶接技術者・配管加工技術者の技能資格保有が、今や業界標準となっています。


◆ まとめ:配管は、船の“血管”であり、“神経”でもある

 

推進、操舵、冷却、消火、生活――
船のあらゆる機能は、配管という見えないネットワークで支えられています。

歴史と共に進化してきたこの分野は、これからも技術革新の最前線で「命を運ぶ配管」を担い続けることでしょう。

 

 

次回もお楽しみに!

 

 

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