オフィシャルブログ

第25回造船配管雑学講座

このエントリーをはてなブックマークに追加
Bookmark this on Livedoor Clip
Bookmark this on Yahoo Bookmark
LINEで送る

皆さんこんにちは!

有限会社古庄工業、更新担当の中西です。

 

だから面白い

造船配管の現場を語るとき、必ず出てくる言葉があります。「狭い」「暑い」「複雑」。船体内部は限られたスペースに機器や配管、ケーブル、ダクトが密集し、場所によっては姿勢を変えるのも難しいほどです。溶接や切断、曲げ加工が伴うため熱もこもりやすく、作業環境は決して楽ではありません。にもかかわらず、造船配管に惹かれる人がいるのはなぜか。そこには、難条件をクリアして船を成立させる、技術者としての充実感と達成感があります。

造船配管工事は、図面通りに作れば終わる仕事ではありません。もちろん設計図や配管系統図、艤装図面は存在しますが、現場では微妙な干渉や収まりの問題が必ず起きます。例えば、隣接する配管の勾配が確保できない、支持金具の取り付け位置に補強材が必要、機器の据え付け位置がわずかに変わった、他職種の作業が先行してスペースが埋まった。こうした状況で求められるのは、図面を読む力だけでなく、現場で成立させるための判断力と調整力です。つまり造船配管は、現場で“考える”仕事です。

さらに、造船配管には陸上配管とは異なる配慮がいくつもあります。船は振動し、揺れ、熱膨張も起きます。配管が固定され過ぎれば応力が溜まり、逆に緩すぎれば振動で擦れや損傷が起きます。支持方法、スリーブ、クランプ、膨張吸収、フレキシブル部の使い方など、長期運用を前提とした設計思想が必要です。塩害への耐性も重要で、材質の選定や塗装、防食対策が品質に直結します。配管をつなげば終わりではなく、長く安全に使える構造に仕上げることが求められます。

造船配管の職人技が際立つのは、加工の工程です。配管は直管をつなぐだけでなく、曲げ、分岐、異径、機器接続、フランジ、バルブ、計器取り出しなど多様な要素を含みます。船内の取り回しは複雑で、必要最小限のスペースに収めるためには、曲げ角度や寸法の精度が非常に重要です。少しの誤差が干渉を生み、取り付けができなくなることもあります。だからこそ、測る、切る、曲げる、合わせる、溶接する、検査するという一連の工程に、丁寧さと経験が求められます。

また、造船配管では「整備性」が特に重視されます。船は運航中に故障が起きれば重大な影響を受けます。だからこそ、点検しやすい位置にバルブやストレーナを配置する、フィルタ交換が可能なスペースを確保する、将来の更新作業を見越した取り外し手順を考えるといった、運用目線の配慮が不可欠です。完成後に船員や整備担当が扱うことを想像しながら、現場で最適な収まりをつくる。ここに造船配管の職人としての“気遣い”が現れます。

もう一つの魅力は、多職種連携の面白さです。造船は溶接、塗装、電装、艤装、機関、内装など多くの職種が関わります。配管はその中心にあり、他職種との調整が必ず発生します。ここで求められるのは、単なる協調性ではなく、工程全体を理解し、先読みして動く段取り力です。いつどこでどの作業が入るかを把握し、干渉を避け、必要な作業スペースを確保しながら、自分たちの工程を遅らせない。こうした段取りができる人は、現場で信頼され、評価されます。

造船配管の達成感は、完成時だけではありません。難しい収まりを成立させた瞬間、干渉を解決してスムーズに通せた瞬間、加工精度がぴたりと合った瞬間、検査で問題なくクリアした瞬間。そうした小さな成功体験が積み重なり、技術者としての自信になります。さらに、完成した船が港を離れ、実際に運航される姿を見たとき、造船配管に携わった人は、自分が関わった配管が海の上で機能しているという強い誇りを感じます。

厳しい現場条件があるからこそ、造船配管は“できる人”が光る仕事です。図面理解、加工技術、溶接品質、検査対応、段取り、調整。これらを磨けば磨くほど、難しい船にも対応できるようになり、仕事の幅も広がります。造船配管の魅力は、困難を乗り越えるほど、技術者としての価値が高まるところにあります。

 

 

有限会社古庄工業では、一緒に船舶の安全運航を支える仲間を募集中です!
「人柄」を最重視する採用方針で、未経験の方も大歓迎。
詳しくは求人情報ページをご覧ください。皆さまのご応募を心よりお待ちしております!

詳しくはこちら!

 

pkljganbnchielpk.jpg