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第10回造船配管雑学講座

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皆さんこんにちは!


有限会社古庄工業、更新担当の中西です。

 

 

造船配管施工の鉄則──“動く構造物”に命を吹き込む現場の掟


今回は、造船配管工事の現場で長年受け継がれてきた「鉄則」について、経験と技術をもとに詳しく解説します。


◆ 鉄則①:図面は“絶対”、でも“現場で完成する”

 

設計図はあっても、船の現場は想像以上に複雑です。

  • 現場の溶接隙間、構造物のわずかな歪み、他配管との干渉

  • 作業姿勢の確保が難しい狭所や曲面、傾斜構造

したがって施工者には、図面を読みつつ、現場で微調整する判断力が求められます。


◆ 鉄則②:すべては“勾配”と“流速”が決める

 

特に排水・冷却水・オイル戻りラインでは、勾配・配管径・流速設計が命。

  • 勾配は基本1/100〜1/50(用途による)

  • 流速が遅すぎると滞留、速すぎると摩耗・騒音・振動の原因に

  • 垂直配管ではエア抜きバルブや水溜まり防止設計が重要

“配管は重力と流体の物理”で動くことを常に意識して施工する必要があります。


◆ 鉄則③:溶接・フランジ接続は“3拍子揃って合格”

 

配管の命は、何よりも接合部の確実性

  • 強度(機械的に壊れない)

  • 密閉性(漏れない)

  • 耐環境性(腐食・熱・圧力に強い)

 

そのためには、

  • 溶接ビードの均一化とノンダメージ(スパッタ・酸化防止)

  • フランジ接続時のガスケット材選定・締付トルクの適正化

  • 磁粉探傷・浸透探傷・X線検査などの**非破壊検査(NDT)**も欠かせません


◆ 鉄則④:マーキング・色分けは“未来への伝言”

 

造船配管には、以下のような配管識別規格があります。

  • 緑=淡水、青=海水、赤=消火、黄=燃料、白=空気など

  • 向き・流体・系統名をラベルやペンキで記載(JIS Z9104 など)

これにより、修理・整備・点検時の安全性と効率が大幅に向上します。

“誰が見ても、わかる設計と施工”がプロの鉄則です。


◆ 鉄則⑤:配管は“振動と腐食”との闘い

 

船は揺れ、振動し、湿気にさらされます。
だからこそ、以下の対策が必須です。

  • 防振支持金具の設置(ゴムブッシュ・Uボルト+スプリング)

  • 電気防食(亜鉛サクの設置)による腐食防止

  • ドレン弁の設置による水抜き・残留液の排出

いくら設計が良くても、「振動→ゆるみ→漏れ→事故」の流れは防がねばなりません。


◆ まとめ:見えない部分こそ、正確・丁寧に

 

造船配管は、完成後に“見えなくなる場所”ばかり。
だからこそ、施工時の1ミリの妥協が、10年後のトラブルになるのです。

  • 設計どおりであること

  • 現場ごとの対応力を持つこと

  • 見えない部分にもプロの矜持を込めること

それが、**船を動かすための“静かな技術者たちの鉄則”**です。

 

次回もお楽しみに!

 

 

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